い(い)きる。

生きることは言い切ること。

女性ラノベ主人公は存在しない

(注意︰とある時雨沢恵一作品の一応のネタバレを含みます)



ライトノベル。アニメ・漫画・ゲーム的な感覚を取り入れたエンターテイメント小説の総称です。前世紀末から我が国で急速に発展したこの分野では、そのメインターゲットが男性である都合上、女性主人公がほぼ存在しません。

そう言われて、え?アレとかソレとかあるでしょ?と首を傾げた方も多いでしょう。そうですね、生物学的には女性であるキャラクターが主人公を務めるラノベというだけなら、たしかにそれなりの数があります。

しかし実のところ、それらの「女性主人公」と呼ばれるものは、女性の皮をかぶった「実質的男性」に過ぎないのです。だから上の命題は正確には、ラノベには「本当の女性主人公」はほぼ存在しない、ということになります。

「実質的男性」である「(偽)女性主人公」の実例を見ていくことで、この事実を確かめてみましょう。


リナ=インバース(神坂一スレイヤーズ』)

作中世界で(人間の中では)最強レベルの天才魔道士。特に攻撃呪文の多い黒魔術を得意とする。言わずと知れた超有名シリーズであり超有名キャラクター。

リナは弱冠15歳ながら、物語開始時点で既に一人で世界を旅しています。降りかかる火の粉を自分の力で振り払える「ヒーロー」として、ある程度完成されているということですね。魔法のみならず剣もそれなりに使えるという万能ぶりで、チートな俺TUEEEのはしりと言ってもいいでしょう。

また、彼女(実質的に彼)の趣味は、実益を兼ねた盗賊いじめ。この欲望に忠実な暴力性、これだけで「実質的男性」の資格は十分です。

一つささいな問題があるとすれば、相棒である剣士の青年、ガウリイ=ガブリエフとの関係でしょうか。彼は超スゴ腕の剣士で、リナの「保護者」を自称しています。それに、ガウリイの命を救うために、世界を滅ぼす(かもしれない)魔法を使う決断をリナがしたことも。この強い結びつき、もしかして男女の恋愛なのでは……?とつい思ってしまいそうになりますが、それは単なる錯覚です。リナが実質的男性である以上、二人の関係性はいわゆる「ブロマンス」的なものと解釈するのが妥当でしょうね。


ブロマンス(英語: Bromance)とは、2人もしくはそれ以上の人数の男性同士の近しい関係のこと。性的な関わりはないものの、ホモソーシャルな親密さの一種とされる[1]。

山本洋子(庄司卓それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』)

それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ【完全版】1

それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ【完全版】1

30世紀の未来で、人が死なない戦争に参加する、現代の女子高生。

作品を実際には読んだことがないので詳しいことは分かりませんが、この洋子というキャラクターはビデオゲームが好きで、特にシューティングゲームが非常に上手いのだとか。ゲームといえば基本的に男の趣味。実際、いま流行りのeスポーツでも、選手の多くは男性らしいですね。

野球やサッカーのようなプロスポーツを彷彿とさせるeスポーツ業界だが、その中で“少数派”とされているのが、女性選手だ。現在、プロシーンで活躍する選手はほとんどが男性で、女性はほんの一握り。体格などの性差にとらわれず、男女平等に戦えるのがeスポーツの良さでもあるはずだが、圧倒的な“男性社会”だと言えるだろう。

さらにダメ押しとして、アニメ版のキャストが高山みなみ氏。高山氏といえば、『名探偵コナン』をはじめ少年役で有名な声優さんです。ここも、実質的男性ポイントにプラス1ですね。

和穂(ろくごまるに封仙娘娘追宝録』)

自分の不手際でばら撒いてしまった宝貝(仙人の道具)を回収するために、仙界から人間界に降り立った元仙人。

この作品での仙人は山を動かし月を落とすような強大な力を持った存在ですが、和穂は人間界に降りる時にその仙術や知識を全て封じられています。つまり、知恵と勇気こそあるものの、能力的には普通の人間に過ぎないということです。

直接の戦闘は基本的に、相棒である宝貝(この世界の宝貝は意思を持ち人間の姿になれるものもある)の殷雷刀に任せることになりますし、これではまるで「女性主人公」なのでは……?

と早とちりしてしまう前に、上の表紙画像をよーく見てください(いちおう言っておきますが奥にいるのが和穂です)

気づきましたか?そう、和穂は眉毛が太いのです

これは、イラストでだけそうなっているのではなく本編の中でも描写があり、「眉毛の女」と呼ばれることさえあります。

これほど太い眉毛は、女性ではあり得ません。やはり和穂も実質的男性なのです。

ブギーポップ霧間凪上遠野浩平ブギーポップ」シリーズ)

黒い服を着た都市伝説の死神と、自警団的な活動を行っている「正義の味方」の女子高生。

ブギーポップシリーズはそれぞれの巻が半ば独立したストーリーなので、誰が主人公なのかというのは難しい問題ではありますが、とりあえずこの二人が特に重要なキャラであるのは間違いないでしょう。

ブギーポップは、普通の女子高生、宮下藤花に宿った?二重人格?のような?存在であり肉体は女性ですが、自分のことを「ぼく」と呼びます。一方、霧間凪の一人称は「オレ」です。

現実には、自分を「ぼく」「オレ」と呼ぶ女は存在しません。よって、これだけでこの二人は実質的男性となります。

「オレ」女がどのぐらいあり得ないのかというと、実写映画版および旧アニメ版において、脚本の村井さだゆき氏が(リアリティがないからという理由で?)凪の一人称を変更していたほどです。さすがは村井氏ですね。

ブギーポップは笑わない [DVD]

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キノ(時雨沢恵一キノの旅 -the Beautiful World-』)

喋るバイクに乗って様々な国を巡る旅人。

男装、一人称「ボク」、自己責任論者、足がバイクな時点で実質的男性確定ではありますが、キノは更に、鉄砲の扱いが達者であるという特徴まで持っています。鉄砲といえば、フロイト的には男根の象徴。これはもう圧倒的に男らしくて男くさい男の中の男と言っていいでしょう。

ターニャ・フォン・デグレチャフカルロ・ゼン幼女戦記』)

幼女戦記 1 Deus lo vult

幼女戦記 1 Deus lo vult

読んだことないのでよく知りませんが、身体は幼女で中身はオッサンらしいです。つまり実質的男。まあ、この作品に関しては主人公どうこうよりも、そもそも「ライトノベル」であるかどうかという問題があるのですが……

小山ハル(平鳥コウ『JKハルは異世界で娼婦になった』)

JKハルは異世界で娼婦になった (早川書房)

JKハルは異世界で娼婦になった (早川書房)

ナーロッパ的異世界に転生して風俗嬢をやる女子高生。

人格的には作者の思想(なろう叩き)の代弁者、腹話術人形でしかなく、未確定情報ですが作者は男性という話もあるので、実質的に男。


まとめ

以上で見てきたように、ライトノベルに「本当の女性主人公」というものはほぼ存在しないことが改めて明らかになりました。

そうなると、どうせ偽物ならなぜ男性主人公ではなくわざわざ「女性主人公」を選択するのか?という当然の疑問が浮かんできます。これに関しては、「男だとむさ苦しくなる」「自分の好みの女性を操れる」というのが今のところ有力な説であるようです。

ときどき、ライトノベルのこういった「(偽)女主人公」事情をジャンルの後進性と判断して、オレがラノベに真の女性主人公作品を持ち込んでやる!と意気込むプロ・アマチュア作家が現れるのですが、その挑戦はことごとく失敗に終わっています。出てきたものは、こね回したぶん通常よりも歪になっただけの偽女主人公でした。

彼らは、ライトノベルが持つ反・女性主人公の重力を甘く見ていたのです。たとえ女性作家であろうとも、ラノベというフィールドで執筆する限り、「本当の女性主人公」を描くことはできません。決して。

これは悲観するような話ではありません。スニーカーやファンタジアや電撃やMFJやファミ通やガガガやスーパーダッシュやGAやHJに「本当の女性主人公」が存在しないのは、適切な棲み分けであり、自然の摂理なのです。コバルトやホワイトハートビーンズに、本物の暴力と性欲を持った「本当の男性主人公」が一人も存在しないのと同じように。

ラノベ作家(志望者)とラノベ読者の方々は、この真理を頭の片隅にでも置いといてください。

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(参考)


メディアは存在しない

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