い(い)きる。

生きることは言い切ること。

エ/ヱヴァの「考察」、庵野的にアリやナシや

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qの内容に触れています。










せっかくなので、ヱヴァQだけ見直した。たぶん、5年ぶり三度目ぐらい。

公開当時、世間で分からない分からないと言われていたQ。いま改めてシンエヴァのための復習のつもりで見てみると……やっぱり分からんな。

いや、物語の筋という意味でならだいたい分かる。ものすごく大雑把に言うなら、自分が無自覚に引き起こした本来取り返しがつかないはずの大きな被害(サードインパクト)を回復させようと偽りの希望(二本の槍による世界の再生)にすがりついてさらなる悲劇(フォースインパクト・カヲルの死)を呼び寄せてしまう話、とまとめられるだろう。構造としては、猿の手なんかと同じ類型に属する物語と言えるんじゃないかな。

問題は、そうした物語の大きな流れではなく、細かい設定の部分にある。Q初出の用語に限っても、ネーメズィスシリーズ、エヴァの呪縛、アダムスの器、インフィニティ(のなり損ない)、カシウスの槍、アダムスの生き残り、L結界密度……これらがほとんど何の説明もなく次々に繰り出されるのだ。意図的に混乱させようとしているとしか思えない。

もちろんその中には、前後の文脈でなんとなく意味が想像できるもの、別に意味が分からなくてもいいんだろうなと思えるものも含まれてはいる。だがそれを考慮しても、この説明不足の度合いはやはり異常だ*1。単純な用語以外でも、カシウスとロンギヌスの槍が実際にそろっていたら何が起こっていたのか、第一使徒であるカヲルが第十三使徒に堕とされたとはどういうことなのか、青い地球のような何か?など、疑問は尽きない。

この分かりにくさを指して、(旧)エヴァらしさが帰ってきたと喜ぶファンも多い。たしかに、旧シリーズのブームの時は、謎が謎を呼ぶ難解さこそがエヴァの大きな魅力とされていた。実際Q以後は、ネットでの「考察」活動が序・破の時よりもずっと活発になった印象がある。

しかし、むしろそれだけに、どうして今*2になってわざわざこれをやるのか?それがいちばん不可解な点になっている。

なぜなら、庵野秀明監督はかつて、作中の設定にのめり込んでエヴァ謎本を買い漁るようなオタクのことを、ひどく憎んでいたはずだからだ(作品内容やインタビューなどから勝手に推測)

別に作り手の側がお墨付きを与えたわけではないにせよ、旧エヴァのファンの作品受容態度が、「大きな物語」を求めず断片的な細部に「動物的」に反応するだけの「データベース消費」だと形容されたこともある。

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

だからこそエヴァを新たに作り直すにあたって、序や破ではカタルシスのある一本筋の通った物語を重視し、オカルト的な謎の部分は比較的控えめにしてきたのだと思っていたのだが……

もしかして新劇の観客は、庵野秀明に試されているのだろうか。どう見ても考察してくれと言わんばかりの謎だらけのQを差し出されて、喜び勇んで考察を始めたりしたら、これだからオタクは!みんな死んでしまえばいいのに!というお叱りが待ち受けているのか。そんなん虐待ですやん。

もちろん、作り手が「考察」を望んでいようといまいと、別に製作者を喜ばせるためにアニメを見ているわけでもないのだから、消費者一人ひとりが自己責任で作品を楽しめばいい。設定考察遊びにふけるのも、現実の社会問題と絡めて語るのも、モグ波でシコるのも、本来は完全に自由であり等価だ。

ただ、ものがエ/ヱヴァだけに、思うまま作品を消費してやろうとしても、スクリーンに実写で映し出されたオタクの姿がどうにも脳裏にちらついて、ブレーキがかかってしまうところがあるのだった。何年経っても消えないトラウマ。

そんなわけで、エヴァに限らず設定がちょっと緻密で複雑だったりするフィクションの作り手は、受け手による「考察」「設定語り」に対しての感情を、できれば率直に打ち明けてほしいと思っている。

実際のところ、嬉しいの?ウザいの?*3

どちらでもいいのだけど、そこがはっきり分かっていた方が安心して作品に向き合えそうな気はする。指示待ちマニュアル人間でごめんなさい。

*1:14年の眠りから覚めて世界の変化に直面した碇シンジの戸惑いに観客をシンクロさせるため、敢えて説明を省いている、という解釈は一応可能だ。

*2:今、といっても、Qも既に6年以上前の作品なのだが。

*3:まあ表向きには、作品は世に出した時点でお客さんのものでもあるので自由に楽しんでください(^^)とか、作品を深く掘り下げてもらえて嬉しいです(^^)とか無難なことを言うクリエイターが大半だろうが。やはり信用できるのは、自作品のファンを突き放すことにためらいの無い富野由悠季ぐらいか(モビルスーツの些末な設定話なんか振ったらビール瓶の割れた方を顔に押しつけられそう)