い(い)きる。

生きることは言い切ること。

VRMMORPGものが「ファンタジー」って本当ですか?

VRMMORPGもの、というジャンルがあります。

細かい設定は作品によって違いがありますが、仮想現実の世界でプレイできる(たいていは多人数参加型オンラインの)RPG内を主な舞台として展開する物語、というのが一般的な説明になります。ネット小説およびその書籍化を含むライトノベルを中心に、根強い人気のあるジャンルです。

(言うまでもないことですが、HMDで360度の視界を得たり振動機能で一部の感触を再現したりするぐらいならともかく、全身の感覚が反映されたり意識をゲーム内にまるごと投入したりできるようなVRゲームは、いまだに実現されていない未知の存在です)

このジャンルの代表作は、言わずとしれたあの作品。現在でも業界ナンバーワンシェアを誇るメディアワークス=電撃からの鮮烈なデビュー。主要読者にとって馴染み深いRPGのゲーム性が仮想現実で再現されている描写への感動。楽しいはずのゲームプレイが一転、クリアするまでログアウトできずゲーム内で死亡すると現実でも死ぬことになるデスゲーム展開の恐怖。そしてゲーム開発者が仕掛けた罠の意外性……。これらの要素を備えたジャンルのパイオニアとして後続作品に大きな影響を与え、各種メディアミックスも果たした――



そう、高畑京一郎クリス・クロス 混沌の魔王』です。

クリス・クロス―混沌の魔王

クリス・クロス―混沌の魔王

クリス・クロス CDシネマ(1

クリス・クロス CDシネマ(1

といったお約束はさておき。

この、クリス・クロスから始まった(かどうかは知らないので各自好きなタイトルを勝手に代入してください)VRMMORPGものというジャンル。実はネットの一部では、これが「ファンタジー」の一種であるとされる場合があるのです。

たしかに、VRMMORPGものの作中ゲームは、多少の細かい差こそあれ基本的には、人間がいてエルフがいてドワーフがいて、あるいは戦士がいて魔法使いがいて僧侶がいて、といった典型的な「ファンタジーRPG風」の世界設定を採用しているものが多いです。少なく見積もっても、恐らく8割以上がファンタジーRPGでしょう。

では、物語の主な舞台であるゲームの世界設定ジャンルがファンタジーであるという一事をもって、その物語作品自体を「ファンタジー」と見なすことは、果たして妥当なのでしょうか?

問題を明確にするために、VRMMORPGものの類似・隣接ジャンルを見ていきましょう。まずは異世界転移・転生もの。その中でも特に、レベルやステータスやスキルや(主に戦闘時の役割という意味での)職業といったゲーム由来の概念が、舞台となる異世界に導入されている作品群です。代表作は、知名度という点では暁なつめこの素晴らしい世界に祝福を!』あたりになるでしょう。

こうした作品はしばしば、その世界設定の安易さや画一性を批判されています。ですが、仮にそうした声が批評としては全面的に正しかったとしても、作品が「ファンタジー」であるかどうかとは関係がありません。たとえどんなにチープに見えたとしても、実際に「異世界」に主人公が訪れている以上、ゲーム要素を含む異世界転移・転生は間違いなく「ファンタジー」です。

次に、ゲーム実体化もの。これは、自分のプレイしていたゲーム(RPG)がそのまま実体化した(かのような)世界に主人公たちが放り込まれてしまうといったタイプの作品群です。元ゲームはVRな場合もそうでないこともあり。実体化世界においても、レベルやステータスやスキルや職業といったゲーム要素は、形を変えたり変えなかったりしつつ存在していることが多いようです。代表作は、猫耳猫こと、ウスバー『この世界がゲームだと俺だけが知っている』、著者が脱税で起訴され有罪判決を受けたことで知られる、橙乃ままれログ・ホライズン』などがあります。

この世界がゲームだと俺だけが知っている 1

この世界がゲームだと俺だけが知っている 1

こちらも、異世界転移転生とさほど話は変わりません。たとえ元がゲームでありゲーム要素が引き継がれているとしても、そこは既に主人公たちにとっては「現実の異世界」です。ゲーム実体化のプロセスによっぽどの科学的な説明でもつかない限り、ゲーム実体化ものも「ファンタジー」と認めて問題がないでしょう。

さて、これらと比較して、VRMMORPGものはどういった位置づけとなるでしょうか。

表層的な部分では、やっていることは上の2ジャンルとそんなに大きな違いはありません。「中世ヨーロッパ風」の世界でパーティーを組んだりクエストを受けたりモンスターと戦ったりレベルを上げたり家を買ったりセックスしたり。読む側の面白さとしても重複する部分はあるでしょう。

しかし、いかに精巧な世界であれそれは現実ではなく、あくまで科学技術によって擬似的に構築された仮想空間に過ぎません(ゲームも現実の一部だ!とかそういうのはYour StoryでありMy Storyではないのでお引き取りください)*1。そしてほとんどの場合は主人公たちも、そして読者も、予めそのことを承知しています。

VRMMORPGものには、本物の超常的な要素が一つも存在しないのです(フルダイブ型のVRゲーム機という存在自体がファンタジー!とか、だからそういう陳腐で低レベルな混ぜっ返しは要りませんってば)。

このような、いわばガワだけがファンタジーである設定のみを理由に、VRMMORPGものを素直に「ファンタジー」そのものとすることには、わたしはどうしても抵抗があります。

……といったような話を何の気なしにツイッターでしたところ、VRMMORPGものはファンタジーであると主張する人物の一人から「ファンタジー純潔主義」というレイシストっぽい罵倒を頂戴してしまいました。

ヒドい……わたしは純潔主義なんかとは正反対の……そう、「ファンタジーヤリマン」とでも言うべき寛容さの持ち主なのに……泣いちゃうから……(´;ω;`)

(もしも本当に「ファンタジー純潔主義」者だったら、ゲーム要素ありの異世界転移転生もゲーム実体化も、こんなのファンタジーじゃない!で片付けてると思いますよ)

ともあれ。VRMMORPGものがファンタジーならファンタジーでも別にいいんですけど、根拠らしい根拠って聞いたことないなと思うわけです。この件で根拠が必要となるのは、「VRMMORPGものはファンタジーではない」と主張する側ではなく「VRMMORPGものはファンタジーである」の方という点には異論はないですよね?

もしも明確な根拠が存在するのであればちょっと興味があるので、我こそはと思う、VRMMORPGものは紛れもなくファンタジーだ論者の方は、ここのコメント欄でもご自分のブログでもツイッターでもいいので、持論をブチまけてもらえるとありがたいです。よろしくお願いしますm(_ _)m

バーチャルボーイ (本体) 【バーチャルボーイ】

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*1:現実かどうかを基準にすると、たとえば夢の中の世界が舞台の『NiGHTS』とか『えりかとさとるの夢冒険』とかみたいな作品も微妙になりそうだが、まあVRMMORPGよりはファンタジーだろう。

ナイツ マルチコントローラー付

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えりかとさとるの夢冒険

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