はてなーによる『ミステリと言う勿れ』擁護
ドラマ化も決定している大人気ミステリマンガ、田村由美『ミステリと言う勿れ』(小学館)について先日、このような問題が指摘されました。
主人公が作中で披露する「ある実験」のエピソードが、実は作者・作品と全く関係がない他人のとあるツイートの内容ほぼそのままだった、というものです。
父親教室の体験学習でテストが配られた。「30分でそれを解いて下さい」だが看護師が話しかけたり電話を始めたりと邪魔をして、結局誰も解けなかった。苛つく彼らに看護師は言った。「予定をこなしたくても邪魔が入って達成感を味わえない。それが赤ん坊を抱える母親の気持ちです」 #twnovel
— 水木ナオ (@nayotaf) January 26, 2015
家事と子育てが本当に楽ならもっと男性がやりたがる pic.twitter.com/Juxq8eaASM
— アイムフリー☺︎ (@TeacherhaGreat) August 14, 2021
比べてみると、誰が見ても「似ている」ことは間違いないようですね。共通の元ネタがあるならともかく、それぞれ独立に偶然この内容にたどり着く可能性は非常に低そうです。
またマンガの方についてですが、現代日本を舞台にした特に超常的な要素の無い物語作品において、このような形で有名な都市伝説などでないエピソードが紹介された場合、再現性はともかくそのような実験が現実で一度は実際に行われた、あるいは少なくとも実際に行われたと主張する者が一人は実在する、という前提で読まれるのが一般的だと思われます。
これに対し、もともと『ミステリと〜』に好意的だったらしいはてなでは、擁護意見が大勢を占めることになりました(自分自身は『ミステリと〜』については以前、無料試し読みで数巻読んだ記憶が多少ある程度です)
https://b.hatena.ne.jp/entry/4707026576348243522/comment/FM008B
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?何が問題なの? 主人公が社会学の実験だと考えて、その場で語った挿話でしょ。ツイ主が単に因縁つけたいだけにしか思えない。
2021/08/17 20:59
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?刃牙読んだら失神しそう
2021/08/17 22:05
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?この漫画のこの主人公は「どっかで聞いたけどそんな物の見方あるらしいですよ?」って教えるだけでそもそも物事の真偽はどうでもいいって感じだけど。寓話と一緒ってイメージ
2021/08/17 23:46
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?BASARAの頃から好きな作家さん。記事やブコメを見て何だか残念な気持ち。注目を浴びるといろいろ言われるのねえ…
2021/08/18 00:18
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?いいんじゃない? 真理を語るキャラって訳でなし。MMRと同じ。問題があるなら真に受ける側では。 / Kindle版1巻見直してるけど、「フィクションだぞ」って宣言はないのかな。まあノンフィクションには見えないだろうが
2021/08/18 01:28
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?ちょうど最近この作品読んだばかりだけどこれは特に問題がない気がするけどなあ。主人公は「どこかで聞いた話ですが」みたいな言い方をしていた記憶/3巻まで無料だった!読んでから批判して<a href="https://www.cmoa.jp/title/140206/" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://www.cmoa.jp/title/140206/</a>
2021/08/18 03:51
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?漫画でスカートめくり等の犯罪が合法っぽく描写されていても「読者は漫画と現実の区別ぐらいつく!お気持ち批判は表現の自由の侵害」のはずなのに、漫画で真偽不明として紹介された話は社会学実験だと信じちゃうのか
2021/08/18 05:16
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?ちゃんと作品読むとわかるけどこの主人公の言動は韜晦ばっかなんでフィクション中の事実性はもちろん現実の事実性を問うのはいくらなんでも頭悪くないですか
2021/08/18 07:44
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?何か問題なの?
2021/08/18 08:06
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?この漫画ミソジニー連中がこないだ読んで敵認定してたからなあ。
2021/08/18 08:32
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?「現実とフィクションを混同する馬鹿はいない」とよく言われるがこんなにいるじゃんか!あからさまに虚構の漫画の中に「事実です」と書かれてようが、とりあえずは信じない・懐疑するのがまともな人間だろう?
2021/08/18 08:45
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?
- [漫画]
待って。まさかコレに突っかかる人はゴールデンカムイを読んで土方歳三は爺さんになるまで生きてたとか思い込むタイプ?漫画だよ?
2021/08/18 11:36
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?このページの前に「前にネットでチラッと見た記事で、だから詳細はわからないんですが」と前置きしていることは隠すのね。書かれてる3巻は今ならkindleで無料なので、言及する前に読みましょう
2021/08/18 14:02
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?ポリコレアフロがそれっぽい正しさを振りかざして突き進むのを楽しむ漫画なのでその内容の是非で叩くのは意味がないかと。
2021/08/18 18:01
「ミステリと言う勿れ」で社会心理学の実験っぽく紹介されていたエピソード、実はTwitterノベルの創作の丸パクリだったっぽい?ジョジョで映画のエピソードをパクるみたいなもんかと思うし、最後にあるように主人公が「正しいっぽいだけ」なことにも自覚的な漫画だからなあ。正論でやり込めて終わりという話ではない。
2021/08/20 09:17
はてなブックマークでid:IkaMaru氏が指摘しているように、信頼性の弱さは断っているし、ツイッターが元ネタという指摘は意味がないこともわかる。
id:FM008B
id:amakanata
id:DigitalGohst
id:develtaro
id:mugimugigohan
id:vndn
id:kamm
id:femininmu
id:morimarii
id:kkobayashi
id:white_rose
id:rider250
id:cocoronia
id:IkaMaru
id:ka2tako-mk2
id:hiruneya
id:hokke-ookami
彼らの主張は見た限りおおむね、「所詮マンガなんだから固いことを言うな」「ウソを書いても別にいいだろ」といったところに集中しているようです。
擁護意見の検証
読者による『ミステリと〜』擁護は、果たしてどの程度妥当なものなのでしょうか。
元ネタと思われるツイートを改めて見てみましょう。
父親教室の体験学習でテストが配られた。「30分でそれを解いて下さい」だが看護師が話しかけたり電話を始めたりと邪魔をして、結局誰も解けなかった。苛つく彼らに看護師は言った。「予定をこなしたくても邪魔が入って達成感を味わえない。それが赤ん坊を抱える母親の気持ちです」 #twnovel
— 水木ナオ (@nayotaf) January 26, 2015
ツイートの末尾には、「#twnovel」タグがはっきり確認できます。twnovelタグというのは、そのツイートが「ツイッター小説」「ツイノベ」であることを示すものです。
ツイッター小説は読んで字のごとく、ツイッターで公開されている小説です。明確なルールがあるわけではなく、広義にはツイッターで連載される大長編なども含まれますが、一般的にイメージされるのは1ツイート内で完結する超ショートショート的な形式でしょう。当該ツイートもそれに当てはまるものですね。
投稿者の水木ナオ@nayotaf氏のプロフィールや過去ツイを見ても、ツイッターでの小説創作活動を継続的に行ってきたことがよく分かります。
崩壊する施設を共に走り抜ける二人、相手には黙っているが、向かう脱出用ポッドが実は一人用であることを各々知っている。一人は腕っ節が強く、もう一人は足技が達者だ。如何に相手の隙を突き、ポッドに相手だけを押し込むか。「説教は向こうで聞くから、なるべく遅く来いよ」 勝負は、一瞬。#twnovel
— 水木ナオ (@nayotaf) September 20, 2018
→ 左から読めば悲恋 ・ 右から読めば純愛 ← pic.twitter.com/K6tAsnFC8V
— 水木ナオ (@nayotaf) December 14, 2017
綺麗な造形物が大好きなのですが、普段は創作アカウント @nayotaf にて、 #twnovel タグを付けた140字小説を書いたり、画像みたいな文章のお遊びをしています。 pic.twitter.com/KuMiDYZxGM
— 水木ナオ* (@nytf_fm) July 28, 2018
これらの情報が何を意味するのか。つまり問題の「父親教室」に関するツイートは、特定の具体的な作者が存在する、れっきとした「小説」であり「フィクション」だということです。「記事」どころか「嘘松(=創作実話)」ですらない、最初から完全な「作品」です。
他人の作品の内容を『ミステリと言う勿れ』は無断で、作者を伏せて、事実であるかのような形で、ほぼそのまま自作に取り込んだわけです。単に内容が事実かどうかだけの問題ではないのです。これで、擁護意見の多くが的外れであることが明らかになりました。
(そもそも『〜勿れ』の実験については、マンガだから別にウソ書いてもいいじゃんという寛容な態度を取ってる人たちにも、たとえフィクションであっても恐らく黙ってられないタイプの「嘘」はそれぞれ必ずあると思いますが、それはさておき)
そして、客観的に見てこれは商業出版で仕事をするプロの創作者として誠実なやり方でしょうか。自分には、まるっきり「盗用」に思えるのですが。
2015年に同様のツイノベを書いてバズったことがあり、yahooトップでも紹介頂いていたので、もしそれが目に止まっていたのであれば嬉しい限りです✨ https://t.co/YIYN1NZevI pic.twitter.com/dhLTzHfwio
— 水木ナオ* (@nytf_fm) August 15, 2021
つかぬことをお伺いします
— あい すくりーむ (@SjRi9) August 15, 2021
こちら2018年発行ミステリというなかれ3巻を元々読んでおりまして面白い実験だなと思わず信じてしまいましたが、元ネタの方がいらっしゃるのかと驚きました。
水上さんのが元ネタである場合父親教室という創作の話という事で実際に行われたことではないという事ですかね?
こんにちは。こちらは #twnovel という創作小説を示すタグをつけており、飽くまで私の創作の出来事です。実際にこのようなものが存在するかは存じておらず、その内容の是非を問うようなものでもございません。
— 水木ナオ* (@nytf_fm) August 17, 2021
こちらの漫画についても教えて頂いて初めて内容を知り、実際何を基にされたかは不明です。
(上のツイートでご本人が語っているように、ヤフーでも取り上げられたらしいので、そちらで(もちろんマンガの主人公ではなく作者が)見た可能性もありますが、さすがにニュースサイトがフィクションであることを最後まで伏せて記事にするとも思えません(記事の実物は公開期間が過ぎたのか発見できませんでした)。また、仮にうろ覚えで現実の記事だと勘違いしていたのだとしても、実際に作品に取り込む過程で情報の出処の確認を怠ったのであれば、それは当然ながら作家の自己責任となります)
「小説」ではなく「記事」として元作者の存在を抹消したことには5万歩譲って目をつぶり、細部の設定や文章表現まで完全に同一なわけではないのだからあくまで「あらすじ」を「紹介」しただけなのだ、という主張なら通るでしょうか?それも無理があると思われます。
小説の中でもショートショートは、状況設定のアイディアとオチの切れ味が命とされる(ことが多い)ジャンルです。その一般的な文字数よりさらに少ない、最大140字(twnovelタグの分を抜けばさらに少ない)というツイノベの性質を考慮するならば、仮に「あらすじ」を「紹介」するだけでもほぼイコール盗用になると言っていいでしょう。
実際『ミステリと言う勿れ』の当該シーンは、単に設定が酷似しているだけでなく、構成も含めて元作品のコンパクトな物語としての面白みを「そのまま活かす」ことを意識した表現に見えます。再構築、換骨奪胎の域にすら達していません(「父親教室」を「実験」に改変してるのは、主人公の主張の根拠としての説得力をアカデミズムの権威で補強するためでしょうか)
強者文化の無自覚な傲慢さ
元ネタは小説作品。元まとめでも触れられているはずのこの点を『ミステリと〜』読者の人々はなぜか頑なに無視して、当該作品が誰でも自由に利用できるフリー素材だったかのように振る舞っているのです。その傍若無人な態度は、かつて他者の創作物を無造作に使い捨てる非道さで恐れられていた現代アート集団「カオス*ラウンジ」すら思い起こさせます。
『ミステリと〜』読者にとっては恐らく「ツイッター小説」などというものは「小説」未満のものであり、「作品」としての保護に値しないちっぽけな存在なのでしょう。自分の大好きな作家・作品が取り上げてやっているのだからむしろ光栄に思え、といった旧時代のメディア業界人めいた意識すらあるのかもしれません。
(余談になりますが、以前わたしもプロのクリエイターに「イジられた」経験が複数回あります。彼ら作家とその支持者はそろって「イジってもらえてありがたいと思え」と言わんばかりの恩着せがましい態度で接してきたのですが、わたしはいずれの作家も別にファンではなかったので、ただただ困惑させられるばかりでした)
また、似たような事例として最近、こんな出来事もありました。
大手メーカーのゲームが、人気インディーゲームのシステムや設定に類似した新モードを実装した、というニュースです。
『Among Us』は、PC版の配信当初は同時接続プレイヤー数が一桁という時期も長かったが、その後大きな成功を掴んだ(関連記事)。各コンソール向けにも移植され、今では人気タイトルのひとつに数えられている。『フォートナイト』の「インポスターズ」は、こうした『Among Us』の人気に便乗したと、一部ゲーマーから受け止められているようだ。
『フォートナイト』を手がけるEpic Gamesが、『Among Us』を意識して「インポスターズ」を開発したのかどうかは不明だが、もし参考にしていたとしても、それ自体は責められることではないだろう。ただ、前出のTran氏がインディーとしての気持ちにも触れたのは、わずか数人のインディースタジオが手がけ、やっと成功を得ることができた作品を、大手メーカーが安易に真似する状況を残念に感じたのかもしれない。
これも『ミステリと〜』の件も、大手・プロといった強い立場にある側によって比較的弱い側の成果が一方的に収奪される問題であると言えます。たとえ作品単体としてどれだけ優れていたとしても、他作品・他作家・他文化へのリスペクトを欠いたやり口が平然とまかり通る世の中は、やはりどこか間違っているでしょう。
『ミステリと言う勿れ』および読者のこれから
上に貼ったツイートにあるように元作品の作者ご本人は、この件について「もしそれ(引用注:自作ツイノベ)が目に止まっていたのであれば嬉しい限りです」と仰っているので、『ミステリと言う勿れ』という作品に対して外野から求めることは特にありません(プロフィールに「創作物の無断転載・改変はお断り致します。 」と明記しているはずの人物のこの発言を、額面通りに受け取っていいのかは少々悩みますが)
ただ、あくまで個人的な感想として言わせてもらえれば、さすがに作者と出版社はこの問題に対して何らかのコメントぐらいは出すべきなんじゃないかな、とは思います。アマチュアや知名度が低い作家、またマイナーな創作形態であれば、人気プロ作家とその支持者たちによってこうも容易に権利が踏みにじられてしまうのだろうか……と不安を感じている創作者の方々は多いはずなので、安心させる意味でも何かしらの言葉が必要ではないかと。
さらに本音の本音を言えば、連載休止や単行本の回収やドラマ放送中止に至っても全然おかしくないぐらいの不祥事だと思いますけどね。たとえば先日、1クール分以上の内容が完成していながら、衣装デザインの盗用が発覚してまるまるお蔵入りになったTVアニメもありました。
このニュースを見たときには正直、そこまでの厳しい対応を?と驚いてしまいましたが、業界がクリーンであって悪いわけはありません。このぐらいの健全さが現代の創作物で求められる基準とするなら、今回の問題で『ミステリと〜』が作品として具体的な対処を迫られるとしても、決して大げさではないでしょう。
今回の件で深く考えず『ミステリと〜』の擁護に回り問題無しとしてしまった人々については、とりあえず速やかな反省および撤回か、さもなければ「覚悟」を決めた方がいいでしょうね。結果的にであれ元ネタの作品性を否定しその当然の権利を蔑ろにするようなセカンドレイプ的コメントを残した以上は、今のところ自分自身も、自作の文章・絵・曲などを誰に好き勝手いじり回されても文句が言えない状態にあるはずですから。
いくら自分の好きなものだからといって、明らかに創作者倫理に抵触している問題について無理筋な擁護をするような、みっともない真似だけはやめましょう。自分の好きなものにも欠点は必ずあり、多くの場合それは自分自身の欠点にも通じるのだというごく当たり前の事実を受け入れるべきです。
こんな優れた作品につまらないケチを付けるな?バカを言ってはいけません。作品として優れていることは倫理的な問題を免責する理由にはなりませんし、むしろ人気作品は強い影響力に応じた大きな責任を負うべきですらあるのでは。
少なくともわたし自身は今回の件のせいで『ミステリと言う勿れ』に対して、こういう傲慢な人々に支持されている作品なのであればあまり読みたくないな……という気持ちがいっそう強まりました。わたしを含む外野のこのような悪印象を払拭できるかどうかは、『ミステリと〜』ファンの方々の、これからの努力にかかっていると言えます。