本格はてなブログ

うちはマックだからステーキ屋はあっちだぜ?

さあ、「ズブゲーム」の時間だ。

インタビュー2つ=「ズブ」

先日、こんな記事が話題になりました。

現在はタイトルが変更されていますが、元タイトルは統一教会系メディアとVtuberがズブな件」という衝撃的なものです。しかし、実際に読んでみるとその根拠はほぼ、たった2つのVtuberインタビューしかありませんでした。


そこで「ねこます」「のらきゃっと」「Vtuber」「バーチャルYoutuber」などの単語で検索していただければ分かりますが、このviewpointの"個人Vtubeを推すようになり"という行為は2018年ののらきゃっと氏へのインタビュー以降めっきり姿を見せません。そもそも個人Vtuberへのインタビュー行為自体がのらきゃっと氏とねこます氏にそれぞれ一回ずつしかありません。

統一教会との関係が疑われている寸借詐欺と仲が良いVtuberがいるという話もあったようですが(現在削除済み)、少なくとも「統一教会系メディア」と直接繋がるものではないでしょう。)

そして、にわかに信じがたいことにこの記事がはてなブックマークの一部では大絶賛されることに。

この人たちにとっては、たった2つのインタビューでも間違いなく「ズブ」の証拠である、ということらしいです。

同時多発的に同じ話題について書かれたこのはてなブログでも、「ズブ」への疑念を一切示すことなくほぼ全面的に肯定する形で紹介・リンクされていますね。


なお、下書きをしている最中に、先行して公開された「FAQちゃん (@faqfaqyou)」氏のnote記事で、Vtuber業界のトラブルなどもふくめて詳細に指摘された。カルト宗教や反社会的組織とのつながり自体は旧来の芸能界にも見られる問題ではあるが。

後に、取り上げられたVtuberの一人(インタビューを受けたのとは別人)の抗議を受けたことにより、本文の一部が削除されタイトルも改められましたが、「ズブ」に関わる部分はそのまま残っています。恐らく、肯定的にコメントしたブクマカ達の認識も、この点についてはさほど変化していないことでしょう。


わたし自身は正直、Vtuber統一教会や寸借詐欺じたいにはさほど関心がないのですが、この一連の流れには激しく動揺させられました。

たった2つのインタビューを根拠にVtuber(業界)が危険なカルトと「ズブ」であると断言することが許されるのだとしたら、自分自身や自分の好きなものにもそれぐらいの瑕疵(とも言えないような小さな隙)はきっとあるだろうと思ったからです。というより、この基準では完全に潔白と言える人の方がむしろごく少数ではないでしょうか。

もし仮に、この「ルール」が社会全体に適用された場合、市民の誰もが誰に対しても「ズブ」の指摘が可能となります。そこでは我々が取るべき行動は、たった一つしかありません。

それは、敵対者に先んじて、より多く、より強力な(=社会的ダメージの大きい)「ズブ」を相手に背負わせることです。

わたしはこの状態を「ズブゲーム」と名付けることにしました。


「ズブゲーム」の例

『JKハルは異世界で娼婦になった』という小説があります。

タイトルを見れば分かるように、いわゆる「なろう異世界転生もの」の一つですが、珍しく男性ではなくギャルな女子高生が主人公であり、実は「なろう異世界転生もの」叩きの風潮に無条件に乗っかってジャンルとその読者を全否定することを最大の目的とする、一種のヘイト創作と呼ぶべき内容となっています。

試しに、この作品にズブゲームを仕掛けてみることにしましょう。

まずはこちら。

【シミルボン】もしかしてアンチ異世界転生?――ジャンルを揺さぶる「普通の女子高生」 | 牧眞司( JKハルは異世界で娼婦になった | 平鳥 コウ )

ぼくが『JKハルは異世界で娼婦になった』を読んで感心したのは、短い期間に一大ジャンルとなったラノベ系「異世界転生もの」の流れに棹さしながら、このジャンルを相対化する視点があるからだ。いわゆるジャンルの“お約束”を熟知しつつ、それを逆手に取っている。
 いってみれば、これは「アンチ異世界転生もの」なのだ。

書籍版発売直後の書評であり、『JKハル』をひたすら褒めちぎっています。いわゆる提灯記事ですね。執筆者は、書評家の牧眞司氏。

さて、牧眞司氏といえば、ネットの一部ではこの発言でよく知られる方でもあります。

ご覧の通り、特定ジャンルとその読者に対する、見事なまでのヘイトスピーチです。額に入れて飾りたいぐらい。

これはつまり、「なろうヘイト小説と百合ヘイト書評家がズブだった件」ということです。

しかし、まあ、書評家で(おそらく)なろう経験もなさそうな人が、ムーンライト出の女性向けポルノを、その辺の一般イキリオタクでもないのに、「アンチ異世界転生」とかいって喜んでいるのは、フィクションを消費しているだけで別に害があるわけでもない(そうか?)のだが、端からは「いったいなにを見ているのか」という気がしますね。


次。『JKハル』は現代のなろう異世界転生らしく、コミカライズもされています。

小説の出版元は早川書房ですが、漫画版は新潮社のBUNCH COMICSとなっています。

さて、新潮社といえば日本中の誰もが思い出すのがこのニュース。


LGBTをめぐる寄稿や企画で批判を受け、休刊した月刊誌「新潮45」について、新潮社が発行する文芸誌「新潮」は6日に発売した11月号の「編集後記」で、「認識不足としか言いようのない差別的表現」があったとするおわびを掲載した。

新潮社から刊行されていた雑誌で、保守政治家による差別的な主張が掲載されたという問題です。

これは、新潮社=ガチ差別出版社と言わざるを得ないでしょう(わたし自身は、なろうヘイトも百合ヘイトも共に「ガチ差別」だと考えていますが)

要するに、「なろうヘイト小説とガチ差別出版社がズブだった件」とまとめることができます。


また、『JKハル』の作者である平鳥コウ氏は、『ハル』以前に別名義で男性向けポルノ小説も書いていました。

人妻人形日記 - 小説家になろう

僕が好きになった女性は、隣に住む奥さんだった。
叶うはずのない恋。そして子供時代に芽生えた密やかな人形愛。二つの歪んだ欲望はある日、偶然たどり着いたサイトで一つに絡み合う。
"E=mC^2"
それは催眠・マインドコントロール専門の小説サイトだった。

世間で広く知られているように、男性向けポルノはしばしば性犯罪を引き起こす原因となります。

上で挙げたXPJbox=平鳥コウ氏の「人妻人形日記」のブクマ数は、3954件。総PVは1465285。これだけの人々に閲覧されていれば、その中には作品に触発されて、隣家の人妻につい催眠術をかけて肉人形にしてしまった読者も、恐らく500人はいるのではないでしょうか。

即ち、「なろうヘイト小説と性犯罪者がズブだった件」


ということで、ズブズブズブの計3ズブ。あくまで例とはいえ、なかなか良い手を指せたと自負しております。


「ズブゲーム」なんて怖くない?

21世紀最高の批評家である宇野常寛氏はかつて、我々の生きるゼロ年代以降の現代社会は「戦わなければ生き残れない」「サヴァイヴ系」のモードに支配されていると喝破しました。

ご本人もその実践のように高校時代のイジメ加害経験を自慢気に語っており、説得力は抜群です。

男子校で女子居なかったし、受験勉強も嫌だったのでそういうことにしか頭を使わないわけです。集団を維持するためライトな村八分を指揮したり、適度な外敵を設定したりしていました。

(もっともその後、仕事で芸人に「イジられた」だけのことをイジメだ!とまるで弱者のように騒ぎ出したのは、一体どうしたのかな……と心配になってしまいます。サヴァイブ系的な論理で言えば、やられたら徹底的にやり返して叩き潰せばいいだけでは?)

我々は全員が一人残らず既に「プレイヤー」である。この認識に立てば、自分がいま強く恐怖を感じているこの「ズブゲーム」にしても、結局のところサヴァイブ社会に敵を殺すためのサブルールが一つ追加されたに過ぎないのかもしれませんね。

えっ?バカバカしい?法治国家・文明社会に生きる人間なら闘争以外のコミュニケーションを選べるはず?

そうですか。残念ではありますが、信じてもらえないのであれば仕方がありません。

ですが、くれぐれもお気をつけください。

「ズブゲーム」は、もう始まっているのですから……